2007年2月9日金曜日

勝浦の夜

冬にしては生暖かい夜、久し振りに勝浦まで列車で出かけた。何の用もあるわけでなく、目当てはいつもの「たぬき」である。2年ほど前から御宿のK工務店社長に連れられ行き始め、足繁く行くようになった。

「たぬき」は地元では漁師や特定の常連客だけが行く店で、一見客が行き難い敷居の高い店といわれている。もちろん高級ですましているため高いのではない。名物女将のみっちゃん(実名出してすいません)が、その基準を一方的に行使するだけである。

何がうまいか、当然モツ焼に決まっているが、それに加えて季節ごとに用意されたオシンコが又うまいのである。更に、常連が持ち込む海の物が時々出てきたり、みっちゃんお手製の「青梅の甘露煮」とか、「あわび飯」とか、「蕗味噌」とかが彼女の機嫌のいい時、そんなに忙しくない時にそっと出てくる。

そうした気の利いたオカズはもつ焼きとは別勘定(彼女の誠意)である。それらの作り方も教えてくれる。それを又家でつくり、よくできたら持って行き、みっちゃんに賞味してもらい、評価を受ける。つまり、料理の指南である。私の料理のお師匠さんというところ。

元々、母親の代からのお店で、うんーと若い時からおいしい豚のもつ焼きを焼き続けてきたから、自分の作るものへのこだわりは又すごいものがある。一番人気は「カシラ」の塩だろう。あっという間に5本ぐらい食べてしまう。さっぱり味で旨味がジワッという感じで一番最初に食べることに決まっている。続いて「タン」とか「レバ」とか「ハツ」という風に続けて食べて行き、終わりに大抵「ワッカ」か「コブクロ」で仕上げる。酒は地酒の「腰古井」一号瓶のみ。我慢しても3本は必ず飲んでしまう。4本目はみっちゃんの「よしときなよ」という諌めも無視して二人で一本などとせがんで出してもらう。

店は5時から8時まで、まず7時以降は新しい客は入りにくい。というか、断られる。「もう終わりです」とか「一杯だから席がありません」とかいうのはいいほうで、「早くけーんなよ」とか「あんたに飲ませる酒は無いよ」なんていわれる、いわく付きの客もいるようだ。

全て一人で切り回しているのだから、自分の体のコンディションには相当気を使っている。とっておきは「純正豚カシラ肉から抽出したコラーゲン」を、日常食として使っていることだろう。それを手に入れるのは本人以外は至難の業?肩こりがすごいようで、マッサージに通って解消しているようだが、仕事に追われての運動不足と私は見ている。

話は尽きないが、外房の人々の「原型」みたいな人達に合えるのがこの店である。外房暮らしを始めて、いろいろな楽しみが増えたが、勝浦の浜の人達の持つ独特な人情みたいなものに触れられることは、格別に楽しい。ストレスフリーな環境という感じの街と店である。

東京から移住して来た人もちらほらいるが、殆ど常連状態にならないとやっぱり敷居が高い。2年通ってようやく、みっちゃんと飼い猫の話、料理の話、歯医者の話もできるようになった。ひげ生やしたら「様子が悪いオー」と評判は、いまいちだが、ことあるごとに何かプレゼントしてご機嫌を繋がなきゃと思っている今日この頃である。

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